青黛を用いた潰瘍性大腸炎の治療について
- 峯 尚志
- 2024年6月20日
- 読了時間: 2分
当院では2015年以来青黛を用いた潰瘍性大腸炎の治療に取り組んでいる。
症例の多くは炎症性腸疾患内科からの紹介例で、ステロイド抵抗性で免疫抑制剤や白血球除去両方によっても寛解が見られず、やむなく青黛の治療を求めてこられる難治例であった。それにも拘わらず最初の2年間で30%以上が寛解に至り、有効率は90%に迫るという驚くべき治療効果を得た。
ところが、2016年12月肺高血圧症の青黛の副作用に関する厚生省の通達が出され、当院でも使用の中止を考えた。しかし青黛を
使いたいという患者さまの希望が強く、通達を伝えた上で同意書をとり、心エコーを含めた副作用の早期発見のための検査を怠らないことを条件に治療を続けることにした。
治療においては腸管を含めた腹部の冷えを持つ例も多く、大寒の性質を持つ青黛の副作用が起こらないように温裏の処方を合わせたり、肝欝気滞をのぞく処方を合わせたり随証治療の中で青黛を使用した。
また副作用が容量依存性に起こると考え、また青黛が染め物として粘膜に色素沈着して残るのを防ぐため、寛解をみれば、減量に努め、また3日服用して4日休薬、4日服用して3日休薬など、休薬期間を設け色素が粘膜にとどまらないような工夫をした。
その結果、青黛を使用して8年目になるが、肺高血圧を含めて副作用なく安全に治療を継続することが出来ている。また作用機序については不明ながらも、青黛は主成分であるインジコが腸管の中で水様性であるロイコ体のインジコになることで、腸毒性を持つ悪玉菌の侵入を防ぐ作用があるのではないかという仮設を提示した。
青黛は間質に作用する他の免疫抑制剤と違って邪正闘争の最前線である粘膜面に作用するものであり、是非基礎的な研究を進めてほしいと考えている。
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